2007年01月04日

ここは未だ日本か?〜硫黄島からの手紙

パプリカを3回もやっておいて「硫黄島からの手紙」が1回というのもなんだかな、という感じだが、俺ごときがこの圧倒的な史実に基づいた作品をあれやこれや言うのも、それこそ不敬という気がしてならぬ。
とにかく見てくれ、でもってそれぞれ考えてくれ、と言って終わらせたいところだ。
でも実際、考える事が多い筈なので、正月から重いのは嫌だと言わず見て欲しい。
実は「父親達の星条旗」が未見なので、なんとか劇場に掛かってるうちに見に行きたいと思っている。



イーストウッドのこれまでの映画で引き合いに出すとしたら、「許されざる者」かも知れない。
「許されざる者」で俺が強烈に印象づけられたのが、
主人公が豚飼いで、文字通り豚の糞に塗れて過ごす日常のシーンなのだが、
あれは実録西部劇の意図を良く表していたと思う。
「硫黄島」でも同じような意図のシーンが頻出する。
二宮和也演じる二等兵は、糞つぼのバケツを捨てに砲火の下で呻吟し、
戦局最終局面では、栗林中将に出す食事の準備の為、、、これは映画を見て欲しい。

無論、現実の硫黄島ではこの映画の比では無い惨状であったそうで、NHKスペシャルでの
「硫黄島玉砕戦」
http://www.nhk.or.jp/special/onair/060807.html
では、「消し炭迄食べた」と語られていた。
消し炭が無くなったら何を食ったか、あるいは食えなかったか、さすがに番組でも語られはしなかったが、想像することは出来る。

日本の戦争映画は特にお涙頂戴が多く、よく指摘されるように、銃後の婦女子シーンを増やして、暗に戦争の正統化を図ってみたり、
「プライベート・ライアン」のごとく戦場の仮想体験を押し出して、スペクタクル映画にしてしまったり、
とにかく感情に訴えかける作りが多くなってしまうものだが、
この映画はとにかく抑制された作りになっていると思う。

勿論、二宮和也のパン屋上がりの二等兵はじめ、当時の日本からのはみ出し者が寄せ集められたかの如き登場人物の描き方は、異論が出るのは分かる。

といって、皆が皆、中村獅童演ずる下士官の様に狂信に殉じれたかと言えば、それもまた違う筈なのだ。

俺が聞いた事のある、特攻隊の整備班にいた爺さんの昔話で、
「米の飯が食えるから」と特攻隊に志願しながら3度生還し、
その度に袋叩きに会いながら、出撃の度に米の飯を消費し、
結局終戦まで生き延びた不逞の豪傑の話がある。
そういう人間もいたと言う事だ。

自決に急ぐのでは無く、生き延びる事を是とする栗林中将の姿勢は、
しかして最後は死に至る訳だし、生き延びて何をするかと言えば人殺し。
言うなれば悪あがきという奴だ。

それでも「本土への攻撃を少しでも遅らせる」信念の下に足掻き続ける姿に観る者は黙然と画面を凝視する事になるはずだ。

ただ、製作者達は栗林中将に過剰に寄り添う事も避けていて、戦局中盤で指揮系統が破壊され、戦闘指揮所で喚き散らす中将の姿等もきっちり描いている。とにかく中立に徹していて、誠実だと感じさせられる。

こういう中立性がどんな感覚を呼び込むかと言うと、
俺の場合は「マヌケさ」であった。

上記二宮二等兵の糞バケツのシーンでは劇場でも笑いがでた位だったし、
加瀬亮演じる元憲兵の、そして中村獅童演ずる下士官の、それぞれの運命も、マヌケさを感じさせるものであった。裏返せば、それだけ惨めさを感じさせるエピソードになっていると言う事でもある。

反戦を描くにあたって、特定の善悪の規範に沿わない様に作ると言うのはとても困難だ。
この点でイーストウッドはじめ製作者達ははできうる限り誠実に中立を全うしたと思う。
ここまでフェアに描いた製作者達に深い敬意を捧げねばならぬし、
(イーストウッド以外にここまでハードボイルドに作れる奴がいるかと言えば難しいのだろうが)
日本人がこれを作れなかった事は、やはり恥とすべきだろう。

映画の最終盤の栗林中将の演説に、我々は深く頭をたれねばならぬ。
そして、栗林中将の絶命前の台詞は、この映画が驚くべき聡明さで日本人に対して問題提起を成しえている、と感じさせられる。



posted by めたろう at 13:56| 埼玉 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ネットをうろうろして、非常に興味深い硫黄島関連の手記を見つけた。

祖父の硫黄島戦闘体験記
http://www5f.biglobe.ne.jp/~iwojima/index.html

必読。
Posted by めたろう at 2007年01月04日 14:51
硫黄島の話しは、本当にあった事だもんね〜
映画じゃないけど、特集見たことがある。
色々考えさせられるね〜
Posted by *はんぞう* at 2007年01月05日 03:25
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